プリーズリクエスト

naokijan2007-12-27

学生時代に三宮のラウンジで半年お休み半年で計一年ほどホールのボーイのアルバイトをしていた、バブル華やかりし頃であって。
中年の禿げたマスターが歌い、ピアノを弾き、ヴァイヴを叩く。女の子はバイト中心の素人、男の子は大学生以外採用不可。客のほとんどは社用接待官官接待そんなお店。閉店されたとの事は最近風の噂で聞いた。
午後5時半頃から準備して、6時に開店。男の子も女の子も整然と、戦闘体勢にて客を待つ。ただ最初の客が何時来るのかは通常分からない。最初の客が来てから、店は回転を始める。そんな午後6時から最初の客までのほんの短い一時、いつもお店に流されていたCDがあった。オスカーピーターソンのプリーズリクエスト。マスターの好みであるらしいこのCDが他のモノに取って代わる事は、何故か一度も無かった。好む好まざる拘わらずに強制的に"聴かされていた"事になる音盤は後にも先にもこれだけ、当時はジャズなんて、どうでもよかった(いまも案外そうだけど)。

今日、古盤屋で出会い、落手し、聴けた。約17年ぶりという事になる。ジャズ史上に残る名盤でありビギナー向けの定番。オスカーピーターソンが亡くなった直後にひらひらと、ようやくジャズなるものにゆっくりと向き合い始めた私の手の中に落ちてきたのも、なんだか不思議ではある。当たり前の感想だが、当時のほの暗い空間の感触が頭をよぎるようでもあり、やや、小奇麗な音になったようにも感じる、知的で軽やかなトリオ。無数の人々を魅了しつづけてきた名盤特有の人懐っこさを感じる。
何度も繰り返し聴いている。なにも戻っては来ないんだけれど。
時はバタバタと、過ぎ行く。